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シンガーソングライター・渡辺真知子さん~愛犬ピットがつなぐ出会い。 そして歌の力がつなぐ 心の一体感。
投稿日:2016年10月07日

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突然続いた両親との別れ

独身生活を続けている私なので、両親にとって孫代わりになったらいいなという思いもあり、ピットを家族として迎えるようになりました。それから2年程経った時、母を亡くし、その数ヶ月後に父を亡くしました。何もかもがあっという間だったんです。まさかそんな事が立て続けに起きるなんて、これっぽっちも思っていなかったんですよね。その時ピットの存在がなかったら、私はどうなっていただろうと今でも強く思います。

愛犬ピットとの暮らしを一言で表現すると「出会い」

そのような辛い時期にちょうど代々木公園にドッグランができたんです。本当に心に風穴があいた状態の私だったのですが、ピットが喜ぶならと思い、ドッグランに足を運ぶようになりました。大きな木々に囲まれたドッグランで、自然の豊かさに癒され、またそこで素晴らしい友人との出会いも生まれました。

その友人は私よりもずっと年上だったのですが、彼女自身もご主人を亡くした時、一緒に暮らしていたボクサーが大きな心の支えになったそうです。両親のことで涙する私を自宅に招いて、美味しい食事をふるまってくれたりしました。
その後、私自身、大きな変動がバタバタと続き、個人事務所の立ち上げなどが始まろうとした時に、今度はその友人が亡くなったんです。まるで、公私共に私が自立する日を見守り、心の補助輪をはずしていったかのように。すごく不思議な縁を感じました。
そんな友人でもあり、時には母のような存在でもあった彼女に巡り合わせてくれたのは、ピットだと思います。

また私は職業柄、家をあけることが多いのですが、今までピットをペットホテルに預けたことはないんです。友人たちが、今でも交代でピットを預かってくれるから。おかげで、何年経っても多くの友人といまだに家族的なお付き合いが続いています。
これも全部、ピットがつなげてくれたありがたい縁であると感謝しています。

渡辺さんの心の支え、ピット君

ピットを守るためにも心身の健康が第一

コンサートやレコーディングが続くと、否応なしに一日のサイクルが不規則になりがちです。でもピットと暮らしているおかげで健康的に暮らせています。朝夕のご飯やお散歩などのお世話だけでなく、やがてはピットの最期を看取らないといけないという思いがあるので、必然的に気持ちがしっかりしますね。

セントバーナードに抱きつく程の動物好きな子供時代

小さい時から大の動物好きで、とにかく動物を見かけるとすぐにそばに駆け寄ってハグしてしまう子でした。(笑)私自身は覚えていないのですが、散歩しているセントバーナードにめがけていきなり抱きついたりして、両親を驚かせたことがあるようです。他にも道端にいる生まれたての子猫をすぐに拾ってきてしまいましたね。

盲導犬マリンと笑顔でツーショット

ピットが初めて渡辺家にやってきた日の思い出

ピットの前に一緒に暮らしていた愛犬(チワワ)が8歳の時に癌で亡くなったことで、両親みんなの会話がすっかりギクシャクしてしまい、その時改めて気づいたんです。こんな小さな動物が、どれだけ家族の間で大きな癒しの存在となっていたのか。まさに喪失感そのものでした。それから半年ほどして、何かに呼ばれるように地元の横須賀にあるペットショップに入ったんです。そしたら、後ろを向いていたチワワがこっちをぱっと振り返って、私と目がばっちり合ってしまい、それがピットとの出会いとなりました。

その日のうちにそのまま、両親には何も言わず実家に連れていきました。出迎えた母は、私が持っている箱の大きさを見て、すぐに状況がわかったようでした。そして笑みを浮かべながら中をのぞき、「そんなところにいないで、こっちにおいで!」って(笑)。 母がピットを抱き上げていると、今度は庭で盆栽いじりをしていた父が何も言わず物置に向かっていき、亡くなった前の子のオモチャをキレイに洗って、ポーンと窓から投げてきたんです。まさに無口な父らしい歓迎の表現ですね。
兄はみんながまた悲しむからという理由で、犬と暮らすことをずっと反対していたのですが、ピットがやってきたことを聞いて、その日のうちに実家に来て、もうメロメロ。みんなピットにイチコロでした。即家族のアイドルになりました。

それから13年経っても、ピットは大きな病気など一度もしたことがなく、本当に親孝行な子です。ただチワワは普通大人になると耳が立つのですが、13年経ってもいまだに耳がねたまま。(笑)体もがっちりしているので、ジャックラッセルテリアの血がどこかに入っているのかもしれませんね。お店では「チワワ」って書いてあったのですが。(笑)

寝たままの耳がチャームポイントのピット君

自分探しのアメリカ留学時代、クラスで「かもめが翔んだ日」を歌う

私が30歳の頃、バンドブームが訪れ、ボーカル主体の音楽がすっかり影をひそめるようになったんです。それで充電期間を設けようと、一人渡米してアリゾナの英語学校に入りました。ある日、学校でちょっとした催しが開催されることになり、各自で何かを披露することになりました。そんな時、私がプロのシンガーソングライターであるということが他のクラスにまで広がってしまい、1曲でもいいから歌ってもらいたいと周囲が盛り上がってしまったんです。正直、その頃の私は音楽から距離を置いていたかったのですが、仕方なく、当時ヒットしていた「We are the world」を歌いました。もちろん皆は、「ステキだった」と普通に拍手をしてくれたんですが、今度は「あなたのオリジナルソングが聞いてみたい」とリクエストされてしまい。結局、引くに引けず「かもめが翔んだ日」(1978年の大ヒット曲。作曲は渡辺真知子さん)を日本語で歌ったら、もう大喝さい。「エクセレント!」と叫びながら口笛はピーピー鳴るし、まさにスタンディングオベーション。その時、気付いたんです。自分の魂の奥底から発した歌は、言語など超越して多くの人を感動させるんだなって。そんな歌の力の素晴らしさを自ら体感したと同時に、「もう日本に帰ろう」と決心しました。

「与えよう」という驕りの気持ちがあっては歌の力は生まれない

今まで数多くのコンサートを行ってきましたが、会場がひとつになる瞬間を体験することがあるんですよね。私の後ろで演奏しているメンバーとお客様、そして私。この3つのエネルギーが、私の歌を通して会場に大きなグル―ヴを生み出すんです。そう、まるで私がバンドメンバーとお客様のパワーをつなぐストローになったみたいに、グルグルとエネルギーが会場中を回るんです。そんな風に皆の気持ちがひとつになった時は、いくら歌っても、全く疲れないんですよ。でも逆に余計な力みが入っていたり、ましてや私が皆に何かを与えるんだなんて思ったら、ダメです。ひとりよがりの一方通行じゃ、歌の力は生まれないんですよね。そのためには、やはり心身ともに健康でないと無理が出てしまうので、とにかく日々コンディションには気をつけています。

地元でバンド活動をする盲導犬ユーザー愛沢さんと歌の話で盛り上がっていました。

暮らしの中にたくさんある小さな幸せを大切にしたい

ちょっと大げさに言うと、ひとやま当ててやろうみたいな大きな幸せばかり追求すると、どこかにひずみが生まれてくるような気がします。実は、幸せって普段の暮らしの中にいっぱいあると私は思います。例えば食事をしていて「あ、このお皿ステキ」とか、どこか出かけた時に「あ、この香り好き」みたいに「好き」とか「ステキ」という気持ちを言葉にするように日頃から心がけていると、小さな幸せがたくさん見つかると思います。

今、私がすごく感謝していることは、健康であることと、私の歌を今も欲してくれる方たちがいらっしゃることです。私に長く歌ってほしいと望んでいただけるので、そういう意味でも心身のコンディションを整えることが大切ですね。

来年デビュー40周年ということで記念アルバムを出す予定なのですが、その中に大切なピットに捧げる歌も入れようと思っています。

インタビューを終えて~編集後記

待ち合わせは、表参道の喧騒から一歩奥に入った絵本のセレクトショップ「クレヨンハウス東京店」のカフェでした。13歳という年齢を感じさせない渡辺さんの愛犬ピット君は、カフェの階段を元気にかけおりてきて登場。普段はお留守番が多いピット君も、今日は一緒にお出かけと知って、朝からご機嫌だったと話す渡辺さん自身も、足元でずっと静かに寝ているピット君と一緒の取材に終始リラックスしている様子でした。今年還暦を迎える渡辺真知子さんは、まさにポジティブなエネルギーそのもの。今も常に新しいことに挑戦する渡辺さんからのメッセージに、盲導犬サポートSHOPのお客様もきっと共感してもらえると思います。
取材に同行した盲導犬ユーザー愛沢さんは、盲導犬マリンと一緒に地元でバンド活動を行っています。「マリンのマーチ」というオリジナルソングがあることを渡辺さんに話すなど、音楽が持つパワーについておしゃべりが盛り上がっていました。音楽には、言葉も世代も障がいも超えてひとつになる力があることを今回の取材で改めて感じさえられました。
(セツサチアキ)

渡辺真知子さんプロフィール


1977年「迷い道」でデビュー。「”シンガーソングライター”はテレビに出演して歌わない」という当時の音楽業界の常識を覆して積極的に歌番組に登場する。以降「かもめが翔んだ日」「ブルー」「唇よ、熱く君を語れ」など日本のポップス・シーンに残る数々のヒット曲を送り出し、印象的な歌詞と心に残るメロディー、そして深いエモーションをたたえた抜群の歌唱力で一躍人気アーティストの仲間入りを果たす。レコード大賞最優秀新人賞、他音楽祭13賞受賞。パワフルな歌唱は現在も勢いをそのままに、メロウ・ソフト・シャープ・ストロングと自由自在に声を操るボーカルは圧巻。デビューの頃よりコンサート活動を精力的に続けており、その内容はオリジナルを中心にジャズ・ラテン・ロック・クラシック…などスタンダードナンバーをボーダレスに展開している。
近年ではそのライブパフォーマンスが評価され、ブラジル、キューバの日本人移民100周年式典など海外で歌う機会も多い。2011年に日ロ友好イベントとしてロシア・サンクトペテルブルグにて地元のオーケストラと共演し翌年、ロシア大使館でのサマージャズコンサートに出演。2016年にはデトロイトにてディナーショー出演。
また創作活動も意欲的で、2010年以降、周年アルバム含むCDを4枚、コンサートDVD1枚をリリース。ジャンルにとらわれない幅の広さ、大人ならではの表現力で”今”を歌うオンリーワンのアーティストである。2016年10月5日、シングル「ときの華」発売。

お知らせ:渡辺真知子コンサート2016~ときの華~ 
■千葉県文化会館 10/16(日) ■東京国際フォーラムC 11/1(火) ■名古屋今池ガスホール 11/11(金) ■大阪サンケイホールブリーゼ 11/12(土) ■大田原市ピアートホール 11/20(日) ■いわきアリオス小劇場 11/21(月) ■江東区文化センター 2017/1/6
オフィシャルHP「Kamome’s nest」 http://kamome-music.com
オフィシャルブログ「海からのメッセージ」 http://machiko-watanabe.cocolog-nifty.com/blog/

渡辺真知子さんから、補助犬応援メッセージを頂きました!

撮影協力場所:クレヨンハウス東京店
クレヨンハウスHPはこちら

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