ジョン・カビラさん~大切なことはシンパシー(同情)よりエンパシー(共感)~
投稿日:2017年01月07日

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ジョン・カビラさんから、盲導犬応援メッセージを頂きました!

欧米の公共の場所では盲導犬をよく見かける

僕が初めて盲導犬に出会ったのは、確か幼少時に暮らしていた那覇市内だったかと思います。またアメリカの大学へ留学していた時、大学構内を盲導犬と歩く視覚障がい者の学生を見かけたこともあります。

このように街中で盲導犬を見かけるたびに、盲導犬とユーザーは信頼関係で結ばれた素晴らしいパートナーなんだろうなという印象を受けますね。それと同時に実際には盲導犬の数が足りないなど、いろんな課題もあるんだろうという事も考えたりします。

仕事がら欧米に旅行することが多いのですが、日本以上に空港やホテル、レストランなどで盲導犬を見かけます。昔、大学のキャンパスで見かけたように、欧米では盲導犬と出かけるためのアクセスが整っているのかもしれません。実際に盲導犬に関するデータを見たわけではないので本当の理由はわかりませんが、体感的に僕はそう感じました。

課題に対して伸びしろがあると考えて前進

確かアメリカでは、公共の場所でのスロープ設置義務などの法的な整備が、すでに80年代くらいから始まったという記憶があります。もちろん日本もまだまだその必要性があるでしょう。

例えばガードレールはどうするか。車道と歩道を区分けするためにガードレールが存在していますが、そのガードレールがあるがゆえに車いすが通りにくいなど、街中を見渡すと配慮が足りない部分は多々見受けられますね。

こんな風に課題は色々あるかもしれませんが、それに対してダメだとか遅れていると言うことは簡単であって、それよりも伸びしろがあると考えたほうがいいのではないでしょうか。

例えばアクセス問題を解決すれば、障がいがある外国旅行者の方も来日しやすくなる。つまりインバウンド(訪日観光客)の増加、そしてこれが日本の経済効果につながるはずです。ただ海外からの観光客が訪れる日本の神社仏閣は山の中などにあるので、アクセシビリティをどうするかという課題はあります。ですが、逆にここに伸びしろがあると考えて、前進したほうがいいと思います。
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盲導犬フレアとすぐに仲良くなったカビラさん

障がいを持つ人がどれだけ周囲にいたかが、
成熟した社会へ繋がる

幼稚園から始まって社会に出るまで、いろんな人たちがいるということを学ばずに大人になってしまっている現実が、今の社会にはあると思います。それは僕自身も含めてです。

そういう風に育ってしまうと、障がいがある人に対してどう接したらいいのか、声をかけたらいいのかがわからない。それならば人間は経験の動物なので、できるだけ経験を増やしてあげればいいと思います。

最近よく言われているインクルージョン(内包する)の考えのように、車いすの子供や目や耳が不自由な子供と同じ学校にいる。そうして、じゃあどうやって接したらいいのかをみんなで考えるという環境を作っていけば、おのずから何かが変わってくると思います。

例えば夏休みに盲学校を訪れるとか、逆に盲学校の生徒に来ていただくなど、そういう社会経験のカリキュラムを作るのもひとつの方法かもしれません。そこで子供たちは、お互いどうやって一緒に遊んだらいいかを体感できます。また専門の方が間に入って、そこでコーチングをしてもらう。それは子供たちだけでなく、学校の先生たちに対しても同様に。これってまさに双方にメリットがある「Win-Win」の関係ですよね。

あとは教育現場だけでなく、職場も同じです。障がいがある人と一緒に働く。これは本当に必要なことだと思います。障がいがある人やチャレンジしている人を受け入れる組織というのは、本来何が大切であるかということを考えている組織でもあると思います。たとえきっかけがCSR(企業の社会的責任)の取り組みの一環であったとしても、成熟した組織イコール成熟した社会へとつながっていくでしょうね。

理想は、オリンピックとパラリンピックの同時開催

2020年のパラリンピックに向けて、競技場やそこまでのアクセスの整備だけではなく、普段から「歩道橋しかない道路だと、車いすの人はどうするんだ?」という意識をみんなが持っていけば、大きく何かが変わると思います。そしてスポーツでいうならば、理想はオリンピックとパラリンピックの同時開催。競技場等の関係で非常に難しい問題があるのかもしれませんが、いずれはそのような形になってほしいと願っています。

そうなるとまさにパラリンピックの選手に対して、障がいがある云々ではなく、一人のアスリートとしてリスペクトすることにつながると思います。

つまり、シンパシーよりもエンパシー。シンパシーは同情という意味ですが、エンパシーは心が寄り添うこと。上からとか下からとかではなく、思いを寄せる、共感という意味です。このエンパシーの気持ちが広がっていけば、素晴らしいですよね。

震災でより確信したラジオが持つ力

ラジオには3つの大きな特性があります。ローカル、ライブ、そして携帯性。つまり非常にフットワークが軽く、地元にリアルタイムで密着できるので、皆さんにとって一番身近な電波メディアであると思います。

テレビはカメラが必要なので、ずっと生放送をするのは難しいと思いますが、「今」を伝えるメディアとして一番即応性が高いのはラジオです。つまり震災が起きた時、世の中のニーズにすぐに応えることができるのは、ラジオだと確信しています。

それを目の当たりにしたのが、阪神淡路大震災の時でした。メジャーなラジオ局にいる僕たちができることは何かを考えた結果、被災地のコミュニティーFM局を支援することだと思い、「Radio Friends〜つながるラジオ〜」という活動を開始しました。局の垣根を越えて番組を制作し、なおかつ必ず被災地のコミュニティーFM局に放送をつなげて、関東にいるリスナーの皆さんに今の状況や課題などの最新情報を届ける場を作っていました。

ラジオは想像のメディアなんですよ。リスナーの皆さんに自由なイメージをそれぞれ描いてもらえることができるんです。これって「シアター・オブ・ザ・マインド」、頭の中の劇場と言うのですが、そういう劇場の風景をどう伝えていくかは、僕らが毎日試されていることです。それがラジオの大きな魅力のひとつでもあると思います。

スニッフィーは良き相棒

スニッフィーは僕にとって息子でもあり、相棒でもありますね。なにせ我が家で男は、彼しかいないので、女性軍と対抗するにはスニッフィーと団結しなければいけないんです。(笑)でもまさに良き相棒ですね。独り言みたいに色々と話しかけています。
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サッカー大好きの盲導犬ユーザー板嶌さんと盲導犬フレア、そしてカビラさんの愛犬スニッフィー。

犬は返事をしないカウンセラー

犬って全く何も返答してくれないんですが、カウンセリングしてくれますね。犬は、人間とは別の世界で生きているんだけど、どこか近しい接点がある。特に盲導犬と日々暮らしているユーザーの方は、その接点が濃密であると思います。飼い主の気持ちをわかってくれている所とくれていない所があり、返事もしないですが、でもどこかでちゃんと聞いてくれている。時々「え?今、頷いた?まさか!?」みたいな感じがありますよね。

スニッフィーはコンパニオンアニマルなので、彼自身は僕の心に寄り添っているとは当然思っていないと思いますが、でもそういう風に感じられることは多々あります。あたかも「なんで、僕のベッドに入って来るんだ?」と言っているみたいに僕のベッドを占領して、なぜか僕と一緒に寝たがったりとかね。(笑)

最近よく、「サードプレイス」が必要だと言われていますよね。第1の居場所である自分の家でも、第2の居場所である職場や学校でもない第3の居場所。特に利害関係の巣窟でもある会社のような場所からちょっと離れて、身を置ける場所をそう呼びます。

子供たちも同じです。学校以外の場所。それは塾や習い事とも違う場所です。つまり普段の暮らしで使われている「物差し」がない場所を持つことが重要だそうです。そういう意味でも、犬はまさにサードプレイスを作ってくれる存在だと思います。

ジョン・カビラさんプロフィール

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1958年11月1日生まれ。出身地:沖縄県。
CBS SONY(現 Sony Music)入社後、1988年J-WAVE開局と同時にナビゲーターに転身。
J-WAVE「JK RADIO TOKYO UNITED 」のナビゲーターやNHK「サキどり」の司会をはじめ、
スポーツ番組MC、情報番組MCなど、テレビ、CM、雑誌、舞台など幅広く活動中。
ジョン・カビラさんのHP:http://www.jonkabira.com/

インタビューを終えて取材後記

多忙なスケジュールをぬって、愛犬スニッフィー君を抱いて現れたジョン・カビラさん。
ひとつひとつ丁寧にお話しされる言葉から、常に多面的にそして柔軟に物事をとらえ、
課題を見つけ、そのために何ができるのかと考えている方という、印象を受けました。
そしてもうひとつ特筆すべき出来事は、長時間の取材にも関わらず、
ずっと静かにカビラさんの足元ですやすやと眠るスニッフィー君。
その姿はまさに、盲導犬と共通するものを感じさせられました。
また当日同行してくれた盲導犬ユーザーの板嶌さんとサッカーの話で盛り上がり、
気づくとあっという間に取材時間が過ぎていました。
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取材:デザイナー セツサチアキ

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