
横浜と川崎にまたがって立地する、昭和23年創業の歴史あるペット霊園。
 毎年7月に開催している動物慰霊祭大法要の記念品やスタッフユニフォームとして盲導犬チャリティーグッズを採用、声かけパンフの制作協力等、幅広い取り組みで盲導犬を応援頂いています。
 人と動物との別れを通じてその絆に寄り添い続ける、代表取締役社長の若月一朗様にお話しを伺いました。
(以後、平和会社長若月様:若月 部長松江様:松江 聞き手・支援センタースタッフ岩間:岩間と表記)
ペット供養は、「絆づくり」

若月:ペット霊園は、昭和23年に祖父と父が始めました。
    「寺に来られるペットの埋葬が多いので、やってくれないか」
    と依頼を受けたのが始まりです。
    はじめは九品仏浄真寺。昭和27年には池上本門寺に移りました。
    その後昭和32年に祖父と父が、川崎と横浜にまたがり、自然に囲まれ安らげる
    今の場所を見つけ、ペット専用霊園となりました。
    当初は、志のある4、5人でこの霊園を開拓していったそうです。

岩間:一から開拓していったのですね…。
若月:山でしたので、一段一段、自分達で切り開いて、墓地を作っていったそうです。
    その様な始まりでしたので、私も入社当時は、一からやっていきました。
    当時はまだ手作業で、自分の背より深く掘り、バケツで土を出しながら
    埋葬する場所を作っていきました。
    私たちは飼い主さんに、ペットちゃんと人の絆を大切にして欲しいと思っていますが、
    ペット供養は、まさに「絆づくり」です。
    語弊はあるかもしれないですが、その為の作業は「楽しい」と思いました。

 この日もスタッフの方が自ら、花壇の塗り替えを行っていました。
岩間:絆づくりのための作業、と考えると、とても素敵ですね。
若月:私は先代の社長の頃からここに居るので、
    物心ついた時から、霊園で働く大人たちを見て育ちました。
    小さな頃は園も遊び場でしたが、お客様の案内をしてお礼を言われると、
    子供ながらに、貢献できたという喜びがあったことを覚えています。
    霊園って初めて来る方には少し抵抗感があるかもしれませんが、
    そんな環境で育ってきた私にとっては、ペット供養はごく自然なこと。
    「絆づくり」であることが小さな頃から身に染みていたのかと思います。
   今は、スタッフ全員と共に、ペットちゃんや、その飼い主さん達との
    絆づくりのお手伝いをしていきたいです。
    そのうえで、スタッフの成長を見ることが出来るのが幸せですね。
岩間:亡くなっても動物と人の絆は変わらないという事を、
    小さい頃から当たり前に感じていらっしゃったのですね。
    この数十年で動物の立場って変わってきたと思うのですが、
    ペット供養を通じても感じられるところはありますか?
若月:私たち自身、人間と同等以上の葬儀を行って頂ける様に
    色々なご提案をさせて頂いていますが、お客様も同じ想いで
    「人間同様にお見送りしたい」と思って下さっていることが、とても嬉しいです。
    動物やペットちゃんに対しての価値観が上がってきていることを感じますね。

 個別葬専用のお別れ室。ゆっくりとお別れ出来る様、個室になっていました。
    
 岩間:人と動物の絆が、以前に比べより強くなったと感じていらっしゃるのですね。
若月:そうですね。
    ペットちゃんを亡くした方にとって満足できる葬儀をすることによって、
    その子への想いを引きずるのではなく、きちんとお見送りをし、
    また動物たちとの素晴らしいペットライフを楽しんで頂ければ嬉しいです。
    葬儀が終わり、泣き顔が笑顔になって帰っていらっしゃる姿を見ると、
    最後の絆づくりのお手伝いが出来ていることを感じ、冥利に尽きます。

岩間:初七日や四十九日はもちろん、月一に合同で開催される月例法要、
    春と秋の動物合同供養祭や、7月の動物慰霊祭大法要。
    本当に人と同等以上に供養の場を設けられていると感じます。
若月:港区芝にあります増上寺での夏の動物慰霊祭大法要は、
    昭和30年代初期より開催されていました。

春と秋の供養祭を行う様になったのは、私の代になってからです。
岩間:どの様なきっかけで?
若月:東日本大震災です。
    被災地のニュースを見ると、ペットちゃんはもちろん、
    牧場の牛・羊等色々な子達が被害に遭っていましたよね。
    霊園として私たちが出来ることは、やはり「供養すること」。
    震災で亡くなった子たちも供養出来る供養祭を作りたいと思いました。
岩間:被災動物たちの慰霊碑も、そのタイミングで作られたのですか?
若月:そうなんです。
    これはちょっとエピソードがありまして。
    知り合いの獣医師の先生が、震災後の福島県楢葉町へ、現地の状況を見に行かれたのです。
    道路の脇には、生きている子、亡くなった子に関わらずずらっと動物が並んでいたそうです。
    そんな状況の中、帰りの道で一頭だけ道路の真ん中に倒れていた犬が居ました。
    先生はその子の事がどうしても気になって、放射線検査をして連れて帰られました。
    
    その後、私に連絡がありました。
    「若月さん。このことを忘れない為に、この子の骨を、半分持っていて欲しい」と。
    
    その子は、町の名前にちなんで「ならは」と名付け、
    慰霊碑の後ろに眠り、ご塔婆を供えて、ご供養をしています。
    この慰霊碑は、お参りに来る皆さんに手を合わせて頂きたくて、
    参道の分かりやすいところに建てました。

岩間:震災から始まった供養祭が、今では色々な方がいらっしゃる様になったのですね。
    この供養祭も含め、「集う」ということは、
    動物と暮らす方にとっては非常に良いことだと感じました。
    近年、動物と暮らす方同士の繋がりが強くなってきているとはいえ、
    「死」を共有できるコミュニティーってなかなか無いのではと思っています。
    そんな中、「大事な存在が亡くなって、同じ想いをしている方が居るんだ」
    という事を実感できるこの合同供養祭や慰霊祭は、きっと非常に心強く、
    少しずつ整理をつける事が出来る場になっていますよね。

 供養祭の様子。沢山のエコ風船を飛ばす参加者。
若月:正しくその通りですね。葬儀は通過点です。
    お骨を連れ帰って、はじめは心に穴が開いた想いをされる方が大半です。
    ですが、供養祭があることによって、
    「こんな想いをしているのは私だけじゃない。皆さんも同じ想いをしているんだ」
    ということを感じて頂きたいです。そこに、全体で供養する意味があると思っています。
松江:納骨に関しても、同じことが言えますね。
    区切りの四十九日、一周忌の際、お気持ちの区切りもつける為に、
    納骨についてお客様にお伝えすることは大切にします。
    しかし、結果として一歩踏み出すかどうかはお客様次第。
    無理強いは一切していません。

 左:社長若月様 右:部長松江様
若月:お客様の気持ちについて、こちらがコントロールできることではないですからね。
松江:納骨されない場合も、ひとつの供養のかたちではないかと、僕は思っています。
    例えば、気持ちの区切りがつかないままやって後悔したら、後戻りができないんですよね。
    ご自身の心の位置が大事だと思っています。
    僕も去年愛犬を亡くしましたが、やはり出来る限り一緒に居たいと思いました。
    その時の自分の感情を出せることが
    まずひとつの供養にとって一番良いかたちかと思います。
    若月からも「一期一会」がとても大事だと教えられていますし、
    お客様一人ひとりのお気持ちに、平和会全体でも寄り添うかたちでサポート出来たらなと。

 ロッカータイプの納骨堂。思い思いにお花や飾りをしていました。
岩間:昨年は70周年ということで、夏の慰霊祭も盛大に行われていましたね。
   「慰霊祭」ではありますが、とても笑顔が多いのが印象的でした。
    重苦しさが一切ないというか。
若月:やはり、明るくやりたいな、というのもありますね。
    なぜならば、大切なペットちゃんとのお別れの悲しさを乗り越えて、
    元気になって帰っていただきたいからです。
    慰霊祭の後には必ずアンケートをとっているのですが、
    ありがたいことに、慰霊祭のファンの方もいらっしゃるんです。
    慰霊祭で新たな知り合いが出来たという声を聞きました。
    動物というひとつのきっかけで出会いが広がるのは、嬉しいですね。

 2018年の動物慰霊祭大法要の様子。
岩間:若月社長ご自身も、動物と暮らしていらっしゃるんですよね。
若月:今はトイプードル2頭と暮らしています。
    5歳のほっぺと、2歳のぽっけ。2頭とも女の子です。
    名前は娘がつけたのですが、音が似ているので、
    名前を呼ぶと2頭とも振り向きます(笑)
    若いぽっけが生意気で、上の子にちょっかい出すんですよね…。
    でも、上の子はご飯を取られても怒らない。
    「怒りなさい!」っていうんだけど、怒らない。
岩間:取られると、そっと居なくなるタイプですかね。
    うちのもそんなタイプなので、なんだか想像がつきます(笑)
若月:まさにその通りです!
    面白いですけど、「頑張れよ!」と思いますよね(笑)

 左ぽっけちゃん、右ほっぺちゃん
平和会の取組み
若月:テレビで特集を見たのが、盲導犬を応援しようと思ったきっかけです。
    盲導犬になる犬に、パピーウォーカーさんが会いに行く場面が映されていました。
    不安そうなパピーウォーカーさんをよそに、再会を喜ぶ犬の姿を見て、
    「やっぱり犬は覚えているものだなぁ」と、感動しました。
    パピーウォーカー、盲導犬のユーザーの方、それぞれとの絆を感じ、とても印象的でした。
    それから、何かお手伝いができないかと思い、募金箱を置き始めました。
岩間:今では、慰霊祭での記念品や声かけパンフのご協力等、
    本当に色々な取り組みで盲導犬を応援して下さり、ありがとうございます。
    
    ところで、平和会のスタッフの皆さまは、
    現場の方たち含め本当に素敵な方ばかりだと感じます。
若月:ペット霊園って、お客様からするとどんな所か分かりづらく、「不安」も大きいはずです。
    そこでどういう人達が、どんな想いでやっているんだろうか。
    ということを事前に知って欲しいと思っています。
    慌てて整えた葬儀で後悔が残ってしまうと、更に心に傷が残ってしまいますよね。
    スタッフの顔が見えて、来て頂きやすい窓口を整えておくことは、
    満足できるお見送りをして頂くためのひとつの方法だと思っています。

 受付にて。コンシェルジュ藤岡様
岩間:満足いく見送り方が出来ないというのは、非常に心に残るでしょうしね…。
    そういった社長の想いは、ご自身が、
    子供の時からここで色々なお見送りのかたちを見てきたということに
    関係しているのかもしれないですね。
若月:う~ん、そこは無意識でしたね。(笑)
岩間:いや、背景にはきっとあるでしょう!
    スタッフの皆さんはもちろん、園内で行う豆まきやお正月等季節ごとのイベントも、
    霊園に足を運んでもらうきっかけとしてとても素敵な取り組みだと思いました。
若月:ひとつは「子供たちに季節を感じて頂きたい」という想いがあります。
    住宅事情等で最近はなかなか出来ないことも多いと思いますが、
    古き良き時代の行事を園内で体験してもらうことで、
    子供たちの思い出にもなって欲しいです。

   また、ペット供養とは一見関係ないですが、
    地域の方たちやお客様と繋がるきっかけにはなりますね。
    こういったイベントの他にも、健康祈願等もやっていますので、
    ペットちゃんと暮らす方たちにも、気軽なイベントを通じて
    私たちの事を知って頂きたいと思っています。
岩間:地域とのつながりというところでは、災害時の動物防災拠点としても、
    横浜市と川崎市から指定を受け、力を入れていらっしゃいますね。
若月:やはり動物と一緒に避難できる場所にも限りがありますので、
    自分たちが避難する場所と近いところで預けることが出来れば、
    それだけ人の心配やストレスを軽減できるのではないかと思い、はじめました。
松江:3月には、「横浜市の災害時のペット対策」というテーマで講演会にも参加しました。
    過去の震災の課題点を共有し、「いつか来る」ではなく「必ず来る」という想定で、
    地域の取り組みを深くご案内していきたいと考えています。

岩間:より、地域に根差した防災というイメージでしょうか。
松江:そうですね。
    やはりペットに関しては自分たちで
    何とかしていかなければならないというところでは、
    地域の防災情報は伝え続けていかなければならないですよね。
岩間:災害に関しても、ペット供養と同様、なかなか積極的に
    情報を取らない様にしてしまう方もいらっしゃると思うんです。
    ですので、やはり伝え続ける事が必要、というところでは共通点を感じます。
松江:その大切さって、残念ですけど、起こらないと気づかないですよね。
    これは、ペットを亡くすことも一緒なのですが、
    亡くなってから「あぁ。こうしてあげればよかった。」と後悔にならない様に、
    地域の方にはしっかり伝えていこうと思います。
若月:今後は、地域の方と合同で、避難訓練を実現したいと考えています。
    実際に皆さんに参加して頂いて実施することで、
    絶対に課題が見つかるはずですので、そういったことを重ねて、
    今後に活かしていきたいです。

 霊園の頂上からの眺めは、解放感もありお参りに来た方を癒します。
若月社長よりメッセージ

ペットちゃんたちと毎日一緒に居ると、「あたりまえ」が当たり前になってしまって、色々なものへの感謝を忘れがちです。
 でも、やはり感謝の気持ちを忘れないで欲しいです。
 そうすることによって、亡くしたペットちゃんも飼い主さんもお互いが幸せになって、そして動物との素晴らしい絆をまた作って欲しいと思います。
編集後記
インタビュー中に一貫して感じたのは、社長の「人と動物の絆」への深い想い。
 小さな頃から感じられていたその絆を、平和会のスタッフの皆さまに伝え続けることで、「絆づくり」を大切にするスタイルを作り上げてきたのだと感じました。
私自身も12歳のシニア犬と暮らしているので、遠くない未来に、必ずお別れが訪れます。
 その時自分がどうなってしまうのか、今では想像できないですが、平和会さんの様に、社長からスタッフの皆さまが同じ想いで寄り添ってくれる場所があるということを知っているだけでも、非常に心強いと感じました。
 
 テキスト:通販部リーダー 岩間
会社情報
平和会ペットメモリアルパーク
 代表取締役社長 若月一朗
 【霊園と火葬場】
 隣接した川崎市麻生区と横浜市青葉区に渡って立地しています。
 〒215-0013 神奈川県川崎市麻生区王禅寺1183
 TEL:044-966-6140  FAX:044-953-2775
 〒225-0001 神奈川県横浜市青葉区美しが丘西2-15-1
 TEL:045-901-7666
 HP :https://www.heiwakai.co.jp/
盲導犬総合支援センターとの主な取り組み:
 盲導犬ユーザーへのお手伝いの方法がわかる「声かけパンフ」の制作協力
 夏の動物慰霊祭大法要にて、コラボグッズを作成








 
 












