ほとんどのワンコは他人に触られるのが嫌なもの。特に肉球や耳の内側、腹部や尻尾などはとても敏感!
でもそこを克服して獣医さんやトリマーさんに安心していけるようにしたいですね。
そこで今回のコラムでは「ハズバンダリートレーニング」の第一歩、色んなところ触れるようにする練習をご紹介!
これはマッサージの基礎にもなります。ご家庭で簡単にできますので、ぜひ読んでくださいね。
トレーニング慣れしていない子でもやりやすいよう、オヤツで誘導する方法をご紹介しています。
このように口の中に手を突っ込んでも大丈夫、むしろ喜んでくれるぐらいが理想です。
ハズバンダリートレーニングって何?
元々は動物園の動物や家畜を対象に行われてきました
ハズバンダリートレーニングを日本語に訳すと「受診動作訓練」で、もともとは動物園などで行われていました。
動物園の動物はできるだけ野生を残した生活をしていますが、医療行為やお世話は人間から受けなければなりません。
大型動物が嫌がって暴れたりしたら周囲の人間に危害が及んだり、生命の危機にさらされてしまうこともあります。
ですからこのハズバンダリートレーニングで、動物が嫌がらず診察などを受けることができるようになるのは必須なのです。
爪切りの時に脚を差し出したりできる動物もいます。すごいですね!
「お手」は脚を触らせてくれる姿勢なんだよ!
動物福祉の観点からペット界も注目
ハズバンダリートレーニングの重要な点は、動物が嫌がらずに自ら進んでできるようになること。我慢したりイヤイヤしながらではないので、動物の福祉という観点でも素晴らしい方法です。
ペット、特に犬は普段のお手入れもとても多い手のかかる動物です。普段の生活を考えるだけでも、
ちょっと考えただけでもこれだけ出てきます。さらに獣医さんに行くと
など、犬は「よく知らない人」に様々なことをされることになります。
激しく抵抗するような子は口輪をしたり、数人がかりで保定して行われますが「嫌なことを無理やり行う」というのは動物の福祉に反しているし、犬がかわいそうです。
そうした経緯もあり、改めてハズバンダリートレーニングというものがペットの世界でも注目されるようになり、現在多くのトレーナーさんがトレーニングメニューに積極的に導入しています。
以前こちらのコラムでご紹介した歯磨きも「そもそもお口の中を触らせてくれない!」という子はこのトレーニングが必須となりますよ。
歯磨きコラム:歯周病に気をつけよう!犬の歯磨きの方法とおすすめグッズ!
特に触られるのが苦手な部位は「生命に関わる部位」
お医者さんでお腹などを触れられるとき、ちょっとドキドキしませんか?
犬もこれとまったく一緒。腹部や耳の内側、お口の中はより身体の内側に近く、損傷すると生命に関わるので、防衛本能が働きます。
このようにれっきとした「触ってほしくない理由」があるので、まずはそこを理解し、
という気持ちを持って、2人6脚でトレーニングを始めましょう!
基本となる手順を説明します!
1.正面から目を合わせない位置にスタンバイ
まず飼い主さんは床に座ってリラックスし、ワンコを手元に呼び寄せましょう。呼び戻しができない子はこの時点でオヤツで誘導します。
そして犬は正面からじっと見られると一種の緊張状態になり、「相手に敵意がある」とみなすことがありますので、真正面からではなく
1. ワンコを両膝の間挟むか、膝に乗せた状態
2. ワンコを小脇に抱えた状態
のいずれかの体勢をとりましょう。
1.はこのような状態です。矢印は犬と人の目線です。
この体勢はワンコの後ろに人がいる状態なので「後ろを取られる」ことに抵抗のある子は次の体勢をとりましょう。
ふたつめの姿勢で写真を撮りました。飼い主からの目線です。
カメラを向けられるのが好きじゃないので、ちょっと緊張気味…。
この状態で緊張してしまう子にはオヤツをあげながら近くまで来てもらいます。ちょっとでも近寄ったら褒め褒め!
チーズのような柔らかいものを手の中に入れて差し出し、それを舐めながら来てもらえると、美味しいオヤツと飼い主さんとの触れ合いがセットになるので効果的です。
2.首の横から背中などを触ります
ワンコのお顔の外側、首の横、背中周りを優しくマッサージします。ここで注意したいのは「外側から、横か下から」行うこと。
上から覆いかぶさるように掌を当てるとびっくりする子もいるので注意しましょう。
ここでもワンコを触りながらオヤツをあげると「触られる=オヤツ=美味しい=気持ちいい」と身体で覚えてくれます。
さらに抱っこ、つまり両手で抱える状態にできると「腹部まで触れている」ことになります。
飼い主さんもリラックスしてお互いに触れあうようにマッサージしていくとワンコもリラックスしてくれますよ。
※マッサージの具体的な方法はまた改めてご紹介します。
慣れない子にいきなり長時間は禁物!ワンコにもよりますが最初は長くても20秒程度、触らせてくれない子は一瞬でも触らせてくれたら褒めるようにし、できるだけスモールステップで進めます。慣れてきたらオヤツをあげながらではなく、マッサージの仕上げにオヤツをあげるようにします。
これを繰り返していくと、ワンコが身体を預けてくれるようになってきます。
そして最終的には「飼い主さんの褒め」がご褒美になるようにオヤツをなくしていくのがトレーニングのコツです。
3.ケアしたい部位を少しずつ触ろう
この時点でだいぶ触れるようになってきました。
ここまで来るとマッサージが好きになってくれているはず(どのワンコも「大好き!」ってなるとは限りません、個性によるので無理なくです)。
そうしたら、耳の内側や足の裏などを少しずつ(本当に少しずつ!)触れるようにしていきます。
肉球を触るのは爪切りなど様々なシーンで必要となってきます。
ワンコがちょっとでも嫌な顔をしないように、よーく表情を読みながら慎重に、でもリラックスして楽しく行ってくださいね!
みなさまのワンちゃんが、より健やかでいられますように。
ワンコについて知りたい「こんなこと」「あんなこと」がありましたら、ぜひお問い合わせからご連絡くださいね!
テキストと写真、イラスト:web担当 成井