一般社団法人 盲導犬総合支援センター

犬は何かをかじっているのが大好き！
骨や鹿の角、かじるタイプの木のおもちゃなど、ずーっとかじってる子も少なくありません。
楽しそうだし、一人で遊んでくれるのは人の手がかからないから相手にできない時などに与えている方も少なくありません。

でも、堅いもので歯が割れたり欠けたりする事故が結構あります！
私の周りでも実際に数人、ワンちゃんのサイズに関わらずいらっしゃいますが、顎の力の強い大きめの子の方が多い印象です。

歯が割れる事故は意外と多いです

歯が割れる（折れる）事故の原因のほとんどが「堅いものを噛んだ」からだそうです。
噛んだものはいろいろありますが、基本的には「かじるために与えた」ものが大半で、

・骨、蹄
・鹿の角
・アキレス
・硬めの犬用おもちゃ

などが多く、一部のガム類で割れてしまったケースもあるそうです。
（実はうちも、とても硬いチーズをかつてあげていました。もったいないけど未使用品が手元にあります…）

そしてほとんどの場合、飼い主さんが良かれと思って購入した犬用品です。
まさか「噛むためのおもちゃ」で歯が割れてしまうとは思いませんよね。
犬用品として売っているものでも絶対とは言い切れないので意識して商品を選びましょう。

かじるおもちゃにはメリットももちろんある

もちろん「かじる行為」を否定しているわけではありません。
かじるのは犬にとって本能的なもので、ストレス解消になります。
また人のものやケーブルなど、かじってほしくないものをかじらず「与えたものをかじってもらう」ことで、ものの破損や犬にとって危険なことをあらかじめ回避することができます。
ですのでおもちゃは十分に選び、そして必ず人が管理している状況で行いましょう。

犬の歯って頑丈じゃない！

なんとなくイメージで「犬の歯は頑丈」って思ってる方は多いと思います。
肉と骨をバリバリ噛み砕く…そんな野生的なイメージがあったりするかもしれません。
でもそもそも、犬の歯は「肉等を飲み込む」ために
・犬歯などで引きちぎる
・大きなものは臼歯である程度小さくする
という役割があります。

一方、人間は
・前歯などで引きちぎる（マナー上箸やフォークなどを使うことが多い）
・食べ物を唾液と混ぜるために咀嚼する
・咀嚼のために臼歯で食べ物をすり潰す
という役割があります。

つまり人間の歯の方が負荷がかかるため犬より頑丈。
なんと犬の歯のエナメル質の厚さは人の1/5ぐらいしかないそうです…。

人の歯ですが構造自体は一緒なのでイラストで見てみましょう。

一番表側のエナメル質はとても頑丈ですが、その下の象牙質等は意外と柔らかいので、エナメル質が破損してしまった段階で、歯科治療が必要になります。
（これは人も一緒ですね）

歯科治療が得意な獣医さんは少ないです

歯のケアが目的というおもちゃ。
こういうのは比較的柔らかいです。

人間も、医師と歯科医師は別な資格ですし、そのために大学で6年間学ぶ内容も異なります。
医師は歯科治療の知識はありませんし逆も然りです。
そのぐらい専門知識が必要な歯科治療ですから、どの獣医さんも得意としているわけではありません。
「でもうちの獣医さんは歯石除去やってるよ？」とお思いかもしれませんが、これは人の歯科治療の「予防歯科」と言われる範囲です。
数ヶ月に一回、虫歯がなくても歯医者さんに通ってきれいにしている方は結構いらっしゃると思います。
つまり「歯が悪くなる前にきれいにしておこう」というわけで、歯の表面をきれいにしたり、歯石をとったり、歯茎をマッサージして血流を良くしたり、歯肉炎や虫歯の発見をしたりします。
犬の歯石取りもこれと同じです。
ですから「エナメル質が削れてしまった」となると「悪くなった状態」つまり「歯科治療が必要な状態となります。

そうなると獣医さんみんながみんなやっているわけでも得意なわけでもなく、歯科治療のできる獣医さんを探したりするところから始めなければなりません。

人と同じく、犬の歯も個体により状態が様々なので、よほど堅いもの以外は「これを噛んだら絶対ダメ」とも言い切れません。
そして犬は噛むという行為が大好きで、ストレスの発散にもなります。
ですが、「割れた、折れた」とならないように意識して防衛し、飼い主さんの管理のもと、長時間にならないように気を付けていきましょう。